小説目次

第1話 始まりの歌
歌が好きだ。自分ことクウォン=クラシナを表すのに名前や来歴といったものよりも、歌が好きだという特性こそが自分を示すアイデンティティであると信じている。「~~~♪」足元の冷たいコンクリートが、演者への配…
第2話 神秘はまだ、世界に息づいている
世の中は、まだ見ぬ不思議であふれている。まさにミステリー。ミステリーの語源はギリシャ語の「ミューステリオン」で、神の隠された秘密や人智で計り知れない事象を示すのだという。神の隠された秘密。つまり、神秘…
第3話 歌は境界を越えて
意識が戻ったとき、記憶に刻まれた森の深い静けさの中にいた。童話から抜け出したような歌声も、夢幻のように美しい妖精も、どこか遠くの夢の中に消え去ってしまったようだ。だが、耳朶に残るその歌声は、心の琴線に…
第4話 エルミナスという名の世界
エッタと共に、彼女の村を目指して歩き出した。泉から村までは徒歩で10分ほどらしい。森の中を歩くのは不思議な気分だった。緑に包まれたこの場所は、どこか地球の森にも似ているけれど、微妙に違う。風の匂いも、…
第5話 月明かりの部屋で、世界を想う
とりあえずこのエルミナスという世界についての基本的な事はある程度理解をした。この世界の名前はエルミナス。世界のほぼ全域が高濃度のエーテルが含まれた海で構成されている。陸地がほぼ存在せず、海に近い場所は…
第6話 この世界に生きる資格
目が覚めたとき、一瞬どこにいるのかわからない戸惑いを感じた。目の前に広がるのは、大学の研究室や実家のそれとは全く異なる、見知らぬ天井だった。周りを見渡すが、「いいですか、落ち着いてください」と言いそう…
第7話 目覚めし血、歌う者のかたち
「……ん」しばらくして目が覚めた。腕時計で時間を確認すると概ね1時間と少しくらい経ったようだ。薬を飲んですぐに感じた熱はすでに収まり、体は普段通りの調子に戻っている。隣を見ると、エッタが椅子に座って舟…
第8話 旅人の歌、大樹の下にて
病院から一旦家に戻って、ジードさんとエッタの三人で昼食を取った。妖精の家の食事ということで、蜜とか果実とか木の実を想像していたのだが、意外にも肉や穀物中心のしっかりした食事だった。……しかしこの肉、何…
第9話 新しい身体に、風のリズムを
次の日の朝。木々の葉擦れの音に包まれるような涼やかな朝。目を開くと、天井の木目が目に映る。静かな風がカーテン代わりの布をわずかに揺らし、部屋の中に冷えた森の空気を運んでくる。遠くで鳥の囀りが響き、まる…
第10話 この世界で戦うということ
朝、目覚めた瞬間、体を包む感覚がまるで違っていた。昨日まで感じていた微妙なズレが消え、むしろ身体がより洗練されたような感覚がある。ゆっくりと指を動かし、次に腕を回す。関節が滑らかに動き、筋肉が無駄なく…
第11話 この掌に、世界の理を知る
朝、新たな日の光が部屋を照らす中、昨日買った服を身に纏って鏡の前に立つ。この世界に来たときの服が、ジーンズとセーター、ジャケットだけだったので、さすがにまずいということになった。昨日アスタギアを手に入…
第12話 マナは巡り、術は描かれる
赤枝のプリセットされた光刃の訓練を始めてから3日ほどが経った。最初の一日は、マナを穂先に集めるだけでも手こずり、うまく発動しないことが多かった。しかし、二日目には流れがスムーズになり、安定して刃を形成…
第13話 掃除と歌劇、日常に宿る舞台
朝の光が窓から差し込み、部屋の空気を優しく照らしていた。テーブルの上から立ち上る湯気とともに、パンの芳ばしい香りとスープの温かな匂いが満ちている。エッタは優雅にパンをちぎり、スープに浸して口に運んでい…
第14話 修練と診断、宿りし二つの理
訓練場に到着すると、まずはここまでの復習だ。赤枝を使って光刃を発動し、次に紙片を使った水の玉の生成を試みる。これまでよりも早く、そして安定して発動できるようになっている自分に、少しだけ満足感が湧いた。…
第15話 通過儀礼、魔境を歩む者たち
夕食の席、エッタが少し改まった表情で口を開いた。「クウォン、明日から法理術の訓練を次の段階に進めるわ」その一言に、スプーンを持つ手が止まる。訓練の次の段階……?「えっと、次って……何をするんだ?」警戒…
第16話 空へ舞う獲物、深き森の連携
「さて、エアスフィアを起動するわ」メリアが静かに言い、背負っていた小型の筒状のアスタギアを取り出した。その動きには迷いがない。「エアスフィア……?」聞きなれない言葉に思わず尋ねると、ニナが笑みを浮かべ…
第17話 不可視の帳、焚き火に揺れる夢と影
ゼフィルの指示に従い、彼らは手際よく野営の準備を始めた。自分も何か手伝えることがないかと周囲を見渡していると、ニナが鞄から取り出した球状のアスタギアに目を引かれた。「ニナさん、それは?」尋ねると、ニナ…
第18話 本格参戦、示された高み
朝日が昇り始めたころ、一行は野営をたたみ、朝食を囲みながら次の予定を確認していた。焚火で温められた香ばしいスープの匂いが漂う中、リーダーであるゼフィルが口を開いた。「さて、今日は少し予定を変更する。ク…
第19話 高額な対価、語られる花冠の理
ギルドの談話室でアーシャ齢の話題が一段落した頃、扉が静かに開いた。ギルドの女性職員を伴ってゼフィルが入ってくる。彼の手には、金貨が詰まった袋が握られていた。その重みからして、今回の狩りの成果がなかなか…
第20話 アーシャの刻限、癒やし手の資格
朝食の場には、エッタが用意してくれた焼きたてのパンと、ハーブの香りが漂うスープが並んでいた。席に着いた瞬間、昨日の出来事が脳裏に浮かんだ。初めての魔獣狩り、通過儀礼、そしてあの独特の緊張感——全てが新…
第21話 見習いの初診、絶望を越えた奇跡
診療所の扉を開けると、朝の光が静かに差し込んだ。昨日の決意を胸にしながらも、未知の領域に足を踏み入れることへの不安がじわりと広がる。「本当に自分にできるのか?」そんな疑問が頭の片隅をよぎるが、今さら尻…
第22話 闇を視る眼、剣士が背負いし過去
ライアとのやり取りを終えた後も、彼女の笑顔と語られた過去が頭の中に残っていた。彼女の話は明るい未来を感じさせるものでありながら、その裏に隠された孤独と苦しみが強く心に残っている。そんな中、次の往診先に…
第23話 安息の休日、泉に響く歌声
今日は、ヘレナ先生の手伝いも、フェルガンの活動もない自由な日だった。このところは泊りがけでフェルガンの狩りに同行したり、ヘレナ先生の往診を手伝ったりと、慌ただしい日々を過ごしてきた。身体的な疲れはそれ…
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